カーフィルムというのも、一昔前の趣のある言葉になりました。
いや、趣はないか。

思い返せば25年ほど前が全盛期でしょうか。
若者の間で、車を買ったなら、まずフィルムを貼る、ってのが当たり前だったんですね。
あ、フィルムってなんの音かわからんひともいるかもしれませんが、窓に貼る黒やらミラーの薄いシートの事です。
外からは中が見えづらくなり車内のプライバシーを守るほか、内装は直射日光の影響を受けにくくなるという代物。まあ、ほとんど気休めですが、車内温度の上昇を抑えるという意味合いもあったかな。
貼り付けにはまあまあの技術がいりまして、専門職として成り立つくらい難しいものでして、気泡や皺が寄らないで貼れたらちょっと自慢してもいいくらいの技だったのです。
それが、UVカットガラスなどの登場と同時に、乗用車の後ろ三面にプライバシーガラスを採用するなどした車が登場し、名実ともにカーフィルムは一網打尽に駆逐されたという経緯があります。
今でもわずかに売っているフィルムはそういった仕様がなされていない車両や、前三面に貼りたいという人向けに売られているのみで、ずいぶん市場が縮小したのです。同時にフィルム貼り付けだけで食っていた職人さんは、当然メシの食いっぱぐれとなりました。

そういうフィルムが経年劣化すると、非常に剥がれにくいものになります。
まだ新しいうちはシールを剥がす見たいに剥がれるんですが。見ての通り、こそぎ取るような作業でしか剥がせません。

そんな時代もあったねと~、と心の中で口ずさみながら、ひたすらフィルムを剥がす。
あの薄膜の向こう側には、ちょっとしたロマンがあったものです。
車内が見えない、見られないというのは、外部から隔絶した自分だけの秘匿空間。
その中であんなことや、こんなことを、などと妄想していたのですよ、盛った大学生どもは。
彼女もいないのに!
ちなみに、マジックミラー号を考えたSODさんは、天才だと思います。
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