ワーゲン四方山話 その17 「ワーゲンと車社会」

2013. . 02


 さて、昨今急に話題になりだした、自動車取得税撤廃と軽自動車税の引き上げ、および環境負荷ごとの自動車税率、という税制改革案でありますが、無論のことこういった流れには反発が多くございます。
 
 といいますのも、

まず自動車取得税撤廃は要するに新車、なり新車に近い中古車など、50万円を超える自動車を購入する場合に取得額の3パーセントから5パーセントの税率で課税されます。
 ただしこれは、車種、仕様、グレードなどで定められた基準額(財団法人地方財務協会による)をもとに、新車時からの経年による残価率に乗じた金額であり、おおよそではありますが、6年を経過すると自動車取得税はかからないものとなります。

 これは新車を購入したことがない人はぴんと来ない税制かもしれません。無論のことながら、現在現存しているワーゲンに至っては既に自動車取得税は課される対象から外れています。

 もうひとつ問題となっているのが軽自動車税の引き上げですが、これを改正する方便として内向き(国内向け)のアナウンスは「軽自動車と普通自動車の自動車年税額の差がありすぎる」というものでした。
 私などは、そうだそうだと思って「自動車税は下げるべきだ!」と賛成したものですが、何のことはない、「軽自動車税を引き上げる」というだけのことで、要するに自動車取得税を撤廃する分の穴埋めを軽自動車で補填するといった体になるだけのことでした。

 それに加え、環境負荷の高い自動車には自動車税の重課を行うということも考えております。

 面倒なので結論から申しますが。

 こういった側面だけを見ても、政府は何をしたいのか? つまり本来的に「庶民の足」である軽自動車税を上げなければいけない、実に反発の声が大きい法案をなのだが、そもそも自動車取得税を撤廃するという措置に「ほとんど意味がない」にもかかわらず、この双方を敢行するというのは、もはや外圧以外の何物でもなかろうと言うことです。
 事実上、日本の土壌においてはアメリカなどの大排気量車は売れにくい傾向にあり、日本人においても好んでアメリカ車を購入する人というのはごく稀であります。
 その反面ヨーロッパ車は売れ行きは好調で、米国としてはTPPを皮切りにぜひとも自動車産業を日本にねじ込みたいと考えているのですが、よもや新車の売れ行きの四割が軽自動車といった体たらくで、うじうじと燃費と維持費のそろばんをはじいている「中流庶民」の集合体である日本国は「そんなもん」には興味はないのであります。
 ですんで、ここは政治の話で、TPP交渉をうまくやりたいなら交換条件として、軽自動車への優遇措置を改革すべきで、エコカーでなくても(エコカーという減免特例に当てはまらずとも)新車を買いやすいように、自動車取得税を撤廃すべきだ、さらにいうと、排気量ごとに自動車税を設定されたのではかなわないから、実質環境負荷の高い順に自動車税額を決めるべきだ、と。

 ぜーんぶ、アメリカの言い分です。たぶん。

 そういうわけで、今回の法案は我々ワーゲン乗りにとって何のメリットもないどころか、最悪 「前時代的排ガス規制車」 というレッテルを貼られることも覚悟しておかなければならないということです。

 ただ、これは何度でも言いますし、言い続けますが、現況で昭和53年度排ガス規制の車がこの日本にどれほど走っているかというと、おそらく10パーセントにも満たないと思われます。それに対し重課したところでどれほどの得になるのか? という話で、さらに言えば、それは暗に「嫌なら新車買えばいいじゃん」的な話の導入でしかないということです。

 環境負荷云々を言うなら、まだ使える車をスクラップにして新車をバンバン製作することは環境負荷につながらないのか? 否、つながります。
 Co2排出、大気汚染というとすぐに自動車の排気を思い浮かべる方も多いのですが、工場や営業所などから排出されるのも同じことです。さらに言いますと、日本人が乗らなくなった中古の古い車はスクラップされなければいずれ何処かの途上国で再利用されるわけで、彼らはそれらをありがたく乗るわけですよ。よその国で乗るから関係がないというならば、それは排出権というマネーゲームの盤上でしか通用しないロジックであり、実際は地球は丸く、空はつながっているわけです。

 そういうことが理解できない阿呆が「燃費がいいから環境にいい。エコ商品に買い換えることは善である」とか言って錦の御旗を掲げてる。

 んなわけあるか。

 私はそれでも車もバイクも手放すことはしませんし、重課税されても払ってやります。しかし、せめて「環境負荷が高いから」という欺瞞は止めてもらいたい。古い車を大事に乗っている人は、少なからず「資源を無駄に使っていない人」であり、なんなら賞賛されて、表彰されたっていいくらいで、いの一番に自動車税を免除されたっていいくらいなのであります。
 ただ、そうならないのは、この世の中が求めているのは「環境保護」でもなんでもなく、ひどい「統制搾取社会」を助長する仕組みを作ろうとしているだけです。永久に栄え続ける文明がないように、永久に膨らみ続ける経済もありません。
 こういった時代はいつか終わりがきますし、地球温暖化という欺瞞がさらされる日もきます。
 ただ悲しいかな、我々は車産業という一端に位置しているばかりに、こういった問題には触れないわけにも行かず、しかし内実をさらそうが、断固として抗議しようが、無駄なことは分かっています。

 ただ、日本は文化の終着駅であり、そこにおいて古い文化を捨ててゆくことを推奨するなんてのは、人類への背徳行為ではないかと思うのは考えすぎでしょうか?
 それとも、古いものを愛でるなんて趣味は、お金持ちだけの趣味であればいい、庶民はない金絞って新しい車を買いなさいと、そういうことでしょうか?
 
 まじめに考えるだけ馬鹿らしい話ですが、自動車税を「環境負荷に応じて課税」というならば、年間走行距離と販売価額に比例させるべきです。車は走って何ぼでありますから、走らない車は環境負荷も高くないわけです。さらに、販売価額は開発や製作にそれだけのコストがかかっているということですから、おのずと環境負荷も高いわけです。 それに、それだけ車を運用し、値段の高い車を買える人は=お金持ちですから、税負担が高くても当然というか、それくらい払えると考えるのが妥当です。

ま、古いものがすばらしいという懐古趣味者ではありませんから、別の側面からもお話しましょう。

 軽自動車のように排気量も小さく、長距離運行も行わない、まさに「足」といった側面の車は、実際のところ都市部にいる人間はぴんと来ませんが、かなりの確率で地方の家庭には複数台保有しており、重要な役割を果たしています。
 普通車を複数台保有しないのは維持費の問題があるからですが、その点で維持費の安い軽自動車は家族の一人に一台という状況も看過できるわけです。

 都市部以外では、少し離れれば、電車もない、バスも一時間に一本といった地域は無数にあるわけです。むしろそういった地域のほうが多いわけで、高齢者の割合も高い。そこにさらに税負担を強いるのは道義的に疑問であります。
 なにより、世界中何処を探しても660ccごときであんなにすばらしい車を作ることが出来るのは日本のメーカーくらいで、この軽自動車技術は日本でしか育たないというガラパゴス的技術なのです。

 ご存知かとは思いますが、軽自動車という規格は日本だけのもので、これを世界に持ってゆくことは出来ません。ただ、おそらく世界の都市部ではこの軽自動車のような動力性能と運動性能を持ち、コンパクトで最低限の装備が有されている車が求められるべき姿なのではないかと思えます。無論最低限の装備といえど昨今の軽自動車はかなり贅沢な装備ですが。

 そういった武器を持っているにもかかわらず、軽自動車市場を外圧により圧迫することを見過ごし、技術後退を促進するようなこの政府の馬鹿っぷりには辟易します。なんなら都市部には軽自動車しか乗り入れできない法令でも作っていいほどです。

 現況ではエコカーに税金の減免措置が取られていますが、この割合が多くなると当然のことながら減免は撤廃されます。その際に必ず行うのが古い世代の車への重課税です。これらは予測の範疇ですから何も驚くことはありませんが、その先に次世代安全装備としての「衝突危険予測、あるいは回避装置」と「誤発進抑制装置」と呼ばれる、人間がボーっとしてると起こりえるような事故を未然に防ぐ装置が続々と新車の装備に追加され始めている現状であり、ここにも税金を取れる名目があると謳う可能性は無きにしも非ずなわけです。

 これをあえて命名するならば「社会不安負荷に対する税」となります。社会に対して不安要素が高い車か低い車というカテゴリーに分類することで税制を決める可能性があるということです。これもまた新しい車には装備済み、古い車にはない、という意味からやはり現在のエコカーの優遇に似たものになります。

 もう、これでは東京裁判状態で、あれこれあれこれ、後付のような咎が我々に負荷されてゆくのです。ですが皆さん、古い車に乗っているからといって後ろめたい気持ちになることはございません。我々はあるべき車の形にあるべきドライバーの姿として、車を運行しているわけです。

 それに何より、人類の文化遺産ともいえる車の文化を継承して維持しているということに誇りを持とうではありませんか。本格的に現況の自動車産業が我々の敵になってゆくことに疑いはありませんから、せいぜい今のうちにガソリンを炊いて、自動車を走らせてやることです。それが我々ワーゲン乗り、ビンテージカー乗り、バイク乗り、マイノリティたちのささやかなるレジスタンス活動であり、そのエンジンの鼓動と脈動こそがシュプレヒコールになります。

ということで、がんばりましょう。

あ、言い忘れた。

合衆国は大きなリサーチ不足を冒してる。それは「ニッポンノワカモノハクルマホシガリマセーン」

 
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茨木のワーゲン屋さんのブログを読んでいて私と同じ事を考えていたのを知り、共感したので書いてみます。(http://chelm.blog37.fc2.com/tb.php/338-1e892ca0) まぁこんな車乗ってりゃタダの物好きだと思われて仕方ないですが、本人不便でも楽しく乗ってんだから「早く買い替えなよ」とか言うのは愚問なんですよね(笑) この車にした理由は「同い年」で「構造が単純...
2014.01.14 00:10 Runner? Rider? Fighter!