ワーゲン四方山話 その12 「ワーゲンとシートベルト」

2012. . 27

 旧車に触れているとよく耳にすることだとは思いますが、シートベルトをしなくても捕まらない、(無論警察にですが)ということがあります。これはどういうことなのかと申しますと、その時々の道交法規制にシートベルトの装備義務があったりなかったり、あっても装着義務はなかったりした時代がワーゲンの生産された歴史の中に織り込まれているからなんですな。

で、少し前になりますが、2008年6月1日からついに後部座席の三点式シートベルトに装着義務が発生し、テレビドラマよろしくタクシーですら乗客へシートベルト装着を促すようになっております。(実際はほとんど守られてはいませんがね)
この、後部座席のシートベルトはそれ以前は努力義務といいましょうか、「出来ればした方がいい」といった程度の縛りだったので、車両に装備されていても装着する人はかなり少なかったものです。

では、おなじみのそもそもシートベルトがいつから存在しているのかというお話ですが、古くは1899年ダイムラー社の自動車による事故で乗員が車外に投げ出され死亡するという事件に端を発しておると言われておりまして、実用化されたのが1922年、乗用車に一般装備されたのが1955年、フォードがオプションとして発売しました。
ある意味、端を発したダイムラーの事故から56年も経っているのにそれでもオプション扱いとは悠長なお話ではありますまいか。
というわけで、私的には19世紀後端とはいえ自動車に乗れた人間は特権階級の超少数派であり、世論が動くとかそういった流れには達しなかったであろうことから、おそらくは56年間の間にかなりの自動車事故で死亡が重なったため、装備を考えたという見解が正しいのではないかと思います。無論ながらこの時点でもシートベルトをオプション装備する人間はごく少数だったと思われます。

そののち自動車大国であるアメリカにて1967年あらゆる分水嶺といわれるこの年にシートベルトの装着が義務付けされまして、日本でもそれに倣ってか1969年4月より「装備義務」が課せられています。しかしながら日本では運転席のみでよいという珍妙なもので、その後73年12月にさらに改正され二点式シートベルトを前席二脚に装備することを義務付けています。この年度というものは国産車ならば製作年(初年度登録)に該当し、輸入車であれば初年度登録あるいは製作年判定というものでいわゆる車検証上の年式が決定されますから、ご自分の車が規制該当しているかどうかはそこで判断します。並行輸入車などの場合は輸入年が大きくずれていることもありますから、こちらは車体番号から製作年を裏付けるという方法が取られます。

で話を戻して少しさかのぼり、1959年に崖から落ちても壊れない安全な車を作ることで有名なボルボが三点式のシートベルトを開発しており、これをメーカーとして人道的視点から各自動車業界へ技術提供を無償で行うという素晴らしい功績を残しております。いわばここが現在のシートベルトの始祖ともいえます。

ちなみに、再び日本の話に戻りますが、前席二点式からさらに二年経て1975年4月から、前席3点式、後席2点式が義務化されました。ここで妙なのが後席が三人乗りであったとしても真ん中の座席には装備は不要ということで、ただでさえ全席のバックレストがないため、フロントガラスまでツーツーな後席中央は最も車外に投げ出されるリスクの高いデンジャーゾーンでありことを勘案しなかったのでしょうか。

ま、そういうことがあってか、87年に後席中央も二点式が必要になり、94年には後席両側を3点、中央を2点とし、このあたりまでくると空冷ワーゲンで該当するのはメキシコビートルくらいですから、ほとんどの方は気にする話ではありませんが。さらに2012年7月以降はすべての座席が3点にしなければいけないということで決着しております。
以上を踏まえると空冷ワーゲンにおいて、いわゆる6V車というものはシートベルトの装着義務はありませんということがよくわかると思います。67年以降の12Vになってからも68年までは無規制、69年からが色々とややこしい話が絡んできます。当然ながらこれ以降の年式に(理由はどうあれ)シートベルトが付いていない場合、どう言い訳をしようともシートベルト検問では引っ掛かります。してない以前にシートベルトがないんですから。

装備義務と装着義務は別で仮にですね、メキシコビートルなどに限らずで後席ベルト装備該当車両を運行する場合、前席二名乗車なら問題はありませんが三名以上乗るとなると現在の法律では必ずシートベルトを装着しなければいけません故、これも原点罰金の対象になります。実際のところ94年以降に製作されたメキシコビートルの多くが本来付いていなければいけない三点式の後席ベルトを有しておらず、おそらくマウントはあるのですが残念ながら当時のディーラーが装備をオミットしてディストリビュートしてしまってますから、このあたりはオーナーさんが後から装備する義務があります。それをしないのであれば二名乗車の車として構造変更を申請しなければいけませんし、当然二名以上を乗せても違反対象になります。

このように、日本の道交法の変遷を見ても、割と緩やかな規制だったことはお分かりかと思うのですが本来シートベルトはいわゆる『自己責任』下において装着の選択ができるもので法律上の自己決定権の侵害という文言において、努力義務(出来るだけ装着しましょうね)が認められておりましたが、85年には義務化され罰則規定が設けられました。そこから08年までは後席は努力義務とされていたのです。

で、さらに深刻なのが2000年に施行された幼児拘束装置(チャイルドシート)の義務化で、これにより今まで使用していた車が使用できなくなるといったジレンマが一部では発生しました。空冷ワーゲンにおいてはカルマンギアあたりが致命的で、かなりシビアにサイズを選定しなければ後席には乗らず前席に設置するとしても、かなり窮屈なことになりかねず、家族三人でなんでこんな苦行を強いられなければいけないのかといった声がちらほらと。結局そのあたりの利便性を説くと2ドア車という時点で「オカン腰いわすで」的な発想からミニバンが隆盛するに十分な根拠が出来上がったのであります。残念ながら。

無論シートベルトがあって困るものではなくやはり安心安全なものであることに変わりなく、装着率も格段に上がっており、未装着のドライバーなどのほうがマイノリティになりつつあります。過去に多くの若者が風になり散っていった最大要因であるバイクのヘルメット未着用もまた、今では完全に義務化されていますから世はそれでこともナシという時代が来ていることは確かです。

もはや「俺は事故らんから大丈夫」といっている人ほど鼻で笑われる時代ですけども、そういう前時代的なノーヘル発想は安全性より利便性や効率を先買いした時代の社会性のぜい弱性から生まれたものですが、ノンベルトのワーゲンに乗る時はアイデンティティを大事にしつつ安全運転を心掛けるようにして下さいまし。
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