ワーゲン四方山話 その11 「ワーゲンとクーラー」

2012. . 15
 さてさて、そろそろ暑い夏がやってきましてワーゲン乗りの皆様は自他共に「暑い暑いと」小言を漏らし漏らされる時期となります。で、ここでいつもながらに「クーラーって効くんですか?」といった質問をされることが多いのですが、基本的に「効きます」と答えるようにしています。
 というのも、現在リリースされているクーラーキットというモノは現代車のすしてむとなんら変わらないロータリー式コンプレッサーを採用しているとってもスタンダードなもので、その辺の軽自動車より室内容積が小さいワーゲン(特にビートルやカルマン、T3)に効かないはずがないからです。もし効かないというのであれば、それはクーラーガスの量があっていないか、コンプレッサーが壊れているかなど何らかの不具合が発生しているということにほかなりません。
 
 では、そもそもクーラーが自動車に装備されたのがいつごろの話かと申しますと、ところはアメリカ1930年代位からアフターマーケットパーツとして発売された気化熱式ファンクーラーがおそらく最古のクーラーシステムであり、皆さんもイベントなどで何度か目にしたことはあるかと思われますが、助手席の窓に引っ掛ける筒状の簡易式クーラーであります。これにはファンドライブ式とラムエア式に分かれており、ファンドライブ式は走行風圧に頼らず電力を供給することで停車時もクーラー内の水分を気化させてその空気を室内に送り込むことができます。こと走行風でファンが動作するラムエア式は停車時は使えませんが電力供給が必要のないという大変エコロジカルなクーラーでして、実はこういうシステムを積極的にうまく使えば現在の冷房市場はかなり変化していたのではないかと思われます。(いわば冷風扇と同じ) 

 ただ、この気化式クーラーはビンテージパーツ市場でもかなり高額で取引されることが多く、内部に水をためる必然性などもあり、状態の良いものはごく少ないというのが現状です。さらに多くはアメリカ製なので左ハンドル車専用となり、右ハンドルのビートルなどは運転席に取り付けしなければならず、結果的に窓の開閉ができないということになります。
 まあ、多くはビンテージアクセサリパーツとして付けている人が多いとは思います。実際つけるとちょっとスペシャルな感じがしてカッコイイですからね。

 で、そういう原始的クーラーを経て、本格的に冷媒を利用した動力式クーラーが登場するのが1954年のやはりアメリカで、意外なことにこの時発表されたのが世界初の「カーエアコンシステム」であり、一体型でヒーターの機能も有していたコンポーネントシステムだったということ。

ワーゲンのヒートエクスチェンジャーなどに鑑みるとヒーターのほうが圧倒的に歴史が古いと思われがちですが、スプリットあたりでもベントフラップ式にとどまっており、冷却ファンからシリンダーフィンを介した排熱をおまけ程度に室内に送り込む程度で、本格的にヒーター機能を考えてはいなかったことがうかがえます。いわば、車に快適さを求めだしたのがやっとこ50年代中盤ということで、ここではじめて楽して移動から快適に移動するという車の価値が形作られてゆくことになります。
さて、その世界一装備が充実している車を作る国といわれる日本の車市場は1970年代に贅沢なオプションとして一般化されてゆきます。いわゆる『冷房車』というステッカーが窓に張られていたころの話ですね。

で、このところにわかに節電という単語が飛び交っている日本列島ですが、節電効果の一番大きなものが皆さんもご存じのようにエアコンなのですが、いわばエアコン=クーラーなんですが、なぜ消費電力が大きいのかと申しますと単純にエネルギーを多分に使うシステムであるからでありまして、車においても最も動力を必要とする器機であることは言うまでもありません。

現在でもクーラーコンプレッサーを作動させると数馬力から十馬力程度はパワーを食われると言いますから、車の動力性能をかなりスポイルすることになります。コンプレッサーとは描いて字のごとく冷媒を圧縮して送りこむ装置で、昔のコンプレッサーはレシプロ式といい既存の内燃機関とよく似た構造をしていますし、工業用の動力エアコンプレッサーも同じ仕組みです。それがロータリー式(スクロール式というモノもありますな)というモノが現れより抵抗が少ないものに入れ替わって現在に至っています。

このロータリー式コンプレッサーはまさしくロータリーエンジンと同じといっていい構造で、つまるところ回転力を圧縮力に変化させるか、圧縮力を回転力に変化させるかといった違いで、要するにコンプレッサーとはちっこいエンジンのようなものだということがお分かりかと思います。

家庭や建物のクーラーユニットはこの圧縮力を得るために電気モーターを動作させている訳ですから、コンプレッサーが動き続ける限りはモーターが回りっぱなしなわけです。もちろん同じ構造の冷蔵庫も、裏の方でモーターがちゃんと動いているんです。

車が快適なものになっていくにしたがい、空冷ワーゲンにおいてクーラー装備はひとつの分水嶺でありました。
空冷ユニットを生かしながらクーラーユニットを装備することはレイアウト的に非常に困難だったため様々なタイプの取り付けキットが開発されております。無論当時のクーラーキットはほとんどがつり下げ式でダッシュの下に不細工に箱が取り付く形がほとんどだったのですが、ことビートルに関しては同じつり下げ型ではあるものの、運転席から助手席にかけてフィットするように造形された専用のエバポレーター(吹き出しユニット)が存在したことは、いかにビートルがハイソな民衆に支持された車かということを物語っております。
最終的には1975年式の最終の1303に至っては、トランクにエバポレーターを配したインダッシュ式のモデルがリリースされておりますから、かなりこの時点で進んでいたと言えるのではないかと思われます。今では当然の装備なんですが。

毎年毎年言うのはあれなんですが、クーラーなんてなくてもかまわん、というのはやせ我慢ではあるのですが、はっきり言いますと、地球が暑くなっていようが日本が暑くなっていようが、それぞれ人は適応しているはずであり、日本よりももっと暑い国はいくらでもあるわけです。
気温40度で熱中症で倒れるだとかいうのが頻発するにしても、私は最近の人がエアコンに慣れ切って体温調節機能、恒常性機能が衰えているからではないかと思うのです。ことエアコンが各家庭、各自動車に普及してから生まれてきた子供に関しては、そもそも幼少期に体が体温を調整する機能、おもに汗腺を発達させる暇がなく、いわゆるエアコン症などといわれるように自律神経に異常をきたしたりすることがあり、結果として体の弱い子に育つとされています。

私が暑さに強いのは家にクーラーがなかったからともいえますし、強制的に暑いとか関係なしに汗をかくしかない仕事をしているからともいえます。だからワーゲンに乗っても別にクーラーなんてついてなくても、平気で窓全閉でいるような異常体質になったのかもしれません。
まっ、地球温暖化で真夏の気温が上がっているから暑いっていいますが、自分が幼少のころの体感気温を記憶しているはずもありませんから、ことさら暑さを感じている訳ではなく、気温を示されたことによる暗示の効果の方が大きいのではないかと思います。

そういう意味では、暑いワーゲンに乗り目的地に到達しドアを開けた瞬間はどんな真夏の暑さでも思わず「涼しい」と口走ってしまうわけです。
そういうのって、ちょっと得した気分になるのは私だけでしょうか?

ここまで言っておいてなんですが、エアコンをなるべくつけない工夫はそれぞれができることではありますが、節電にかかわらず普段から慣れていない人はエアコン自粛でご無理をなさらませんように。
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