ワーゲン四方山話 その6 「ワーゲンの車高・リア編」

2011. . 07
お久しぶりなワーゲン四方山話です。確か最後は車高の話、フロント編で終わっていたのでした。

続きを楽しみにしていた物好きな方、お待たせしました。

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まだ私の愛車が綺麗だった頃の写真ですね。懐かしい。

以前の話でも少し触れましたが、ワーゲンの軸重は前後で200キロ近く差があり、後輪に動力があることから走行時は常に後輪に荷重がかかりどうしてもノーズアップ傾向になるということでした。
そういった側面においてフロントローにすることは一定の効果があるというお話だったんですが、じゃあ、さて、リアはどうなのかと?

といったところからリアのローダウンの話。
リアタイヤ、後軸をローダウンする方法はいかなるものなのか?これよく訊かれるんですが、少しばかりフロントよりも面倒な作業になります。

言葉で言うのもなんですが、ワーゲンはフロントもリアもトーションバーという「バネ棒」が左右水平方向に各四懸架装置の支点軸に配されておりまして、それぞれは中心がボディに固定され、外側が足回りに固定されております。このバネ棒が懸架がスイングする際に「ねじれ」ることでコイルバネと同じような反発力が生じます。もちろん人間の力でねじれるほどのものではありませんし、リアに至っては誰がどう見ても鋼鉄の棒にしか見えないほどの太いトーションバーが挿入されています。

リアのトーションバーは片側1メートルほどの長さで両端にスプラインが彫られており、このスプラインのあわせ場所により車高の微調整が出来るようになっています。調整する際は内側何コマ外側何コマ、といった具合に内側と外側のスプラインの位置の組み合わせで数センチ単位の車高調整が出来ます。

が、びみょーな調整はやはり出来ません。トーションバーのヘタリが左右で違う場合などは無論この限りではございませんし、そこをあえてずらすかどうかというのも現場の判断になります。

さて、ヘタリということで言うとワーゲンでなくても車というのは必ずどちらかのほうに傾いているもので、大抵は運転席のある側に数センチ傾いています。
「俺のは絶対そんなことはない!」とおっしゃるかたはどうぞ計ってみてください。
妙な方向に傾いている場合はいつも置いている駐車スペースの問題だったり、積載物の問題だったりと、まあ要するに局所的に恒常的に荷重がかかるようなことをしていると「クセ」がつくということです。それをヘタリと言っているだけで、ん、ま,どっちでもいいんですが。

そういや「ヘタリ」って言語はもともとは「経たり」なんでしょうかね?

で、このトーションバーがへたってくると、当然「サスが落ちた」「ローダウン」状態になるわけです。
(この項目でも基本TYPE1のスイングアクスル形式に限定してお話します)

ビートルのスイングアクスル式はミッション側だけに等速ジョイントがあり、ホイール側には配されておりませんで、ジャッキアップするとアクスルシャフト(ドライブシャフト)はへの字を描きます。これは異常でもなんでもなく独立懸架方式の初期の構造とはこういうものです。ちなみにトラックや昔のFR車によく採用されている「ホーシング」と呼ばれるものはデフケースとドライブシャフトが一体になっておりホイールハブまでがひとつのユニットで構成されており、このユニットそのものをコイルバネやイタバネで支えているので「への字」にはなりません。最近のドライブシャフトはほとんどがダブルジョイントですから基本こちらもへの字にはなりません。

というところから、理解していただくと、ビートルのリアアクスルをローダウンすると逆への字、いわゆるハの字を描くようになります。ちゃんとした言葉で書くと「ネガティブキャンバー」になります。

このキャンバー角がひどいものを「鬼キャン」といいます。♪オニキャンこちら手の鳴るほうへ♪、とは関係ありません。

ワイドオーバルの項目でも書きましたが、鬼キャンになるとホイール上端はフェンダーの内側、ボディ中心方向へ移動しますから、結構太いホイールでもずっぽりフェンダー内に収まってしまうことがままあります。

ただ、そこまで落とすと、まずタイヤの接地面が道路面と水平にならずに確実に内減り状態を引き起こしますから、タイヤの性能などは望むべくもなく、です。
まあ、あえていうならコーナリング時にグリップしやすいとかそういうメリットがないわけでもありませんが、かなり限定的な状況のみに有効なセッティングで、そういうシーンで活躍するよりも明らかにデメリットのほうが増えます。

そのデメリットの最たるものが、ミッション側のドライブシャフトジョイント部への負担なのですが、本来水平方向に保たれていて駆動軸がまっすぐ回転しているという前提で、サスがスイングした時のためにジョイントがかまされている部分が恒常的に「斜めになったまま回転している」ことはジョイント部に徐々に負担を強いているということで、下手をするとミッションをぶち壊すことが往々にしてあります。ですから将来的に高額出費を捻出したくない人にはリアの極端なローダウンはお勧めしません。

もちろん、激しい鬼キャンには一定のロマンがあることも確かですし、馬鹿っぽくて意味なくかっこいいのも事実。そのギリギリガールズなルックスにこそ惚れる、という美学もまたワーゲンのような車の楽しみ方でもありますから、車屋としてはいかがなものかと添えつつ、ワーゲン屋としては、ありかな?というコメントは残しておきたいと思います。


ただ、リアエンジンでマフラーのレイアウトが限られている空冷ワーゲンは、リアを落としすぎるとスロープなど急に勾配がつくシーンで、マフラーをガリゴリすりまくるという弊害は100パーセント起きます。
後輪車軸とボディ後端下部のマフラー位置の関係を考えると当然ですね。

ですんで、マフラーは消耗品、といった考え方も備えておくべきでして、それを避けたいのであればできるだけ地上高の高い位置にセッティングできる、ノーマル形状に近いマフラーをチョイスすることがよろしいかと(かなり限定されますがね)

えてして車高というのはシーソーのようなもので、あっちを立てればこっちが立たずな状況が生まれるものでして、ノーマルが絶妙なバランスをとって作られていることの証でもあり、それをブレークスルーするタブーへの挑戦もまた永遠のテーマでありロマンであり、ん、まあ

要するに本人がかっこよければ何だっていいんですけどね、というところに落ち着いてしまいます、結局。
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