私の家は山の手の方で、ええ、けして高級だとか金持ちだとか暗に示唆しているわけではない、ほんとうに山の中でありまして、帰り道はいつも電灯もないような道路を往くんです。
昨晩はまあまあ遅くなって、雨も降り始めていたのでゆっくり帰っていたのですけど、道の真ん中に何かが転がってるんですね。

あーやだなぁ、と思ったんです。よりによって真ん中じゃん。
鹿です。 まだ体が小さかったので一年ってところかもしれません。周辺に破片が落ちているので、車か何かに撥ねられたんでしょう。
このままじゃもう一回踏まれたりするし、それはそれで夢見悪いので、せめて端に寄せておこうと車から降りてみれば、なんとまだ生きていました。
複雑な気持ちです。
どうやら、立てないし歩けないようだったので、イヤイヤするくらいしかできなさそうでした。
それでも、ここに居てとどめを刺されるよりはいいだろうと思います。

足を引っ張って、抱えて、なんとか路肩に。こんなくらいの鹿でも五十キロくらいはありそうです。
外傷らしいものはないので、首とか頭とかやられたのか、よくわからないかった。
だから見守るしかないんですが、そうしていたってどうにもならんから、結局警察呼んだ。
こういった場合、道交法的には、物損事故にあたります。
動物とあたっても、物損です。崖から岩が転がり落ちてきて車にあたった、というのと同じ扱いですので、命があるといえども動物は法のもとに物です。
動物の中でも特別天然記念物に指定されている野生動物は狩猟捕獲、あるいは殺傷を禁じられており、もし行った場合は別の処罰を受けることになります。
ただ、特別天然記念物として指定されている奈良の鹿でも、故意に傷つけようとしたのでなければ轢いてしまっても物損事故として処理されます。故意か過失かで処罰が分かれるのは対人法でも同じですが。
言わずもがな、たとえ野生動物であってもいたずらに殺傷する行為は、動物愛護法あたりに抵触するので犯罪として裁かれます。
で、我々道を走るドライバーやライダーとして、動物と接触事故を起こしてしまった場合、どのようにすればいいのかというと、前述のように公道上で起きた物損事故なので、これは速やかに警察に届けなくてはなりません。
電柱やガードレールにぶつかったわけではなく、命を奪ってしまったということにビビるのもわかるんですが、そこで逃げてしまってはいけません。やっちまったことには責任を取りましょう。
ここでいう責任ってのは、動物を殺してしまったことの責任ではなく、道路上で起こした器物破損事故の処理を行う事をいいます。ですので、せめて、散らばった破片を片付けて、自身が壊してしまった(あるいは殺してしまった)対象物を交通のじゃまにならないようできるだけ配慮をすべきなんです。移動ができない場合は、発煙筒などを使って、後続車や対向車に注意喚起を促さなければいけません。
同時に警察に連絡し、事故があった旨を伝え、書院の到着を待つ。その後事情聴取を受けるところまでが、道路で自動車を運行する者の義務です。
この鹿を轢いた人はそのことをせずに立ち去ったのでしょう。破片がその人の物だったとしたらどうやらバイクです。バイクで鹿とあたったのなら、あるいは本人も無事ではなかったかもしれません。もしかすると、コケたかもしれませんが、痛みも忘れて逃げるように去ったのでしょう。
その後警察が来て多少事情は訊かれましたが、つつがなく答えてその場を立ち去りました。
こういったケースの野生動物が保護されるとは考えにくいです。
でも、実際はどうなるのかは知りませんし、その場で訊くこともしませんでした。
なんか、つらかったんで。
別に鹿に特別な縁があるわけじゃないと思いますが、今年に入って二度も鹿を運ぶことになるとは思いもしませんでした。
どう考えたところで、仕方がないと目を瞑るこそしかできないな、と。
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