ワーゲン四方山話 その3 「ワーゲンの暑さ」

2010. . 11
さて、盛夏の折、皆様いかがお過ごしでしょうか。皆さん暑すぎてヘルムに来たがっていませんね?でも告知はしておかないといけませんので。

8月13日より16日まで、ヘルムはお盆休みをいただきます。
 またお盆明けにどうぞいらしてください。

いや、お盆前の直前メンテももちろんやります(笑)ええ、やりますとも!

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 お盆休みといえばもうすでに入っている方も多い昨今ですが、高速道路の制度変更などで過去にはありえないほどの渋滞が予想され、その中を車内で延々数時間から十数時間を過ごす方もおられるでしょう。

 盆と正月の恒例風景といえばそれまでですが、車内に渋滞を予測した装備(観賞用のDVDだとか食料全般、携帯トイレなど)をこぞって買い求めるくらいなら、深夜とか早朝に出発すればいいだけの事ではないかとは思います。
 この渋滞中、車のエンジンは当然アイドリング状態で止まっているわけですが、もちろんクーラーもがんがんに動きっぱなしになっています。
 
 クーラーのコンデンサーという部品は、クーラーを動かすと熱を持ちます。それを強制的に空冷もさせますが、走行風で冷やすことも考慮されているわけでして、渋滞ともなればそれが機能しませんので車両からの排熱は相当な量になります。当然エンジンにもいえることですが。
 これがつまり、ヒートアイランド現象に始まるエアコン設定28℃だとか、アイドリングストップだとか、渋滞緩和で温暖化ストップ、もしくはCo2削減だとかいう政府お偉方の虚しいシュプレヒコールの根拠になっているわけです。

といったところで、今回も長い話に続きます↓


ところがそんな渋滞の真っ只中にいる当事者たちは涼しい車内で涼しい顔で密閉した空間におるわけですから、まじめにそんな話聞いていられるか、と。
 ただ、逆に言いますと、真夏のお盆の渋滞の高速道路上がどれほどの暑さか、いや熱さかということを知る人はあまりいないかと思われます。
 まして、クーラーが装備されていないワーゲンなどはまさに地獄、冷房の恩恵を受けていないだけに排熱量も通常の車両より少ないのですが、一般人からすれば同じだけの税金や保険を支払っているのに割が合わないんじゃないかとも感じるでしょう。
 
 今日は環境問題とか心身を甘やかすだとか、そういうことを言いたいのではございませんで、ワーゲンはそんなに暑いのか、ということを少し考えていただきましょう。

 ワーゲン乗りがどこへ行ってもこの季節、道行く人に「暑かろう、暑さで人も車もオーバーヒートしないかね?」と、そこまで文学的な言い回しはしなくとも、同種の表現で同義の言葉をかけていただけます。
 そんな時ワーゲン乗りは気だるい笑顔を振りまきつつも「だいじょうぶっすー」といって軽くいなすのが慣例であり、前述のような「割が合わない」と憤慨する人はほぼおりません。

 むしろ、クーラーがないということがそれほど不自然にも感じてはおりませんし、我慢の限界を超えるほどだろうかと、人からねぎらいの言葉を受けるほどかと思うわけです。

 これには少し理由がありまして、通常のエアコン装備の車とエアコン装備が前提でないワーゲンとの間に歴然たる温度差があることを見逃してはいけません。まず現代のほとんどの車両はフロントエンジンかあるいはキャブオーバーで運転席に程近い部分に熱源となるエンジンとフロア外部には前から後ろにかけて排気管が配されています。そのため間接的とはいえ、前からの熱、キャブオーバーならば下からの熱を乗員は必然的にかぶることになり、気温以外の余計な暑さを感じることになります。

 ですがワーゲンはこの点リアエンジンですから排熱はすべて後方へと排出されて乗員がエンジンの熱の影響を受けることはほとんどありません。そのため暑さというのは純粋に気温であるとか、直接照射の日差しだけとなります。
 あと、ワーゲンが大きく現代の車と違うのは、ボディの内側に「帯熱域」というものをほとんど持っていないということが挙げられます。
この「帯熱域」というものが意図して造られるわけではありませんが、現代の車は外側のボディ鋼板から内装のパネルにたどり着くまでに何層かの防音処理、防振処理を行う層(わかりやすいところで内装パネルやカーペット)が形成されており、それらが発砲樹脂製品などで形成されていることが多く、その隙間に空気層が形成され、結果的には鋼板で受けた熱を層に保熱し、方や内装側は冷蔵庫のように冷えているため排出できないいわゆる高気密、低循環環境になってしまっています。
 
 この問題を解決するにはボディ内側に空気の循環層を作り、換気をさせることなのですが、それをするとおそらく車は今より一回り大きくせざるを得ないでしょうし、ドア内部機器のシーリングや防錆などにも多大なコストがかかるでしょう。

その点でいきますと、ワーゲンはほぼ鋼板のみで内外装が構成され、合成樹脂系の内装も持たないことから、鋼板が温められても走行するにつれ気化熱を奪われて自然と車内は気温とさほど変わらない温度になります。むしろ日陰である分日中の炎天下にいるよりはよっぽどましといえます。

 鉄やアルミは熱伝導性が高いので、いわゆる熱し易く冷めやすいのですが、ほとんどの樹脂製品というものは「熱し易く冷えにくい」特性を持っていますので、そういった点でも「クーラーが壊れた現代車」と、「もともとクーラーがないワーゲン」の暑さには暑さの質のようなものが違います。
 

 もうひとつ大きく相違する点を挙げますと、フロントガラスをはじめとする窓の面積の問題があります。ワーゲンはごらんのようにボディの軽量化と居住性、空力も加味してできるだけ小さな窓を採用しています。最近の国産セダンは窓が小さくなる傾向があるものの、ミニバンなどではまだ圧倒的に大きく傾斜したフロントガラスに、視認性の良いリアビューガラスを採用しています。

 一般の建築においても最も熱が入るのが窓(逆に出て行くのも窓)とされておりまして、ここ最近推奨されるのは、寒冷地や騒音地域のみとされていた二重サッシがあります。これは窓本体そのものが二重で空気層をはさんでいるものもあれば、サッシを既存窓に追加して二重にするという方法がありますが、実際にどちらでも経験してみれば違いに驚愕するほどの効果があります。

 ですが、車のほとんどは単板ガラスですから窓の面積は日差しの侵入に大きく関係しますし、そこから直接的に内装の樹脂パッドなどを暖められ、車内の気温は否応なしに上がってゆきます。そのため駐車中の車内が平気で60度を越えたりするんですな。こんな状況で窓を少し開けておいたからといって空気が循環するわけでもなく、車内の温度が下降するよりも先に暖めるほうが早いわけで、そんな中に子供を置き去りにしている親が毎年絶えないのは、頭が悪いとしか言いようがありません。

 先日も幼児二人が締め切ったマンション室内に閉じ込め放置され、空腹と暑さの中衰弱死した事件がありました。当の母親は最初から殺す気でいたのだとしても、真夏の締め切った飲み物も食べ物もない空間がどれほどの暑さで、そこから出られない恐怖と不安とつらさに想像力が働けばあんな残酷な殺し方はできなかったのではないかと思います。

 当然ですが、ワーゲンの中なら大丈夫だとか、夜なら大丈夫だとかいうことではありませんので、ご夫婦で揚々と飲み屋やパチンコ屋に遊びにゆきたい方はご実家やお知り合いに預けるなりしてください。

 それができないのであれば最初から子供など作るべきではないのだと、車という道具を扱うにはそれなりの知識を要するのだと、いずれなり社会は便利で体のいいことばかりではござんせんということを肝に銘じつつ、今夏もがんばって乗り切りましょう。

というところで。

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