ワーゲン四方山話 その1 ワーゲンの重さ

2010. . 20
えー、ここ(2010年)4月1日から車検時に支払う「重量税」というものが若干安くなりまして、従来の5000円から10000円ほどの減税がなされました。まあ、自動車ユーザーにとっては諸手を上げて喜ばしい話でして、税金なんぞというものは安ければ安いに越したことはないというのが正直なところ。

 ただ今回の低減措置は、一昨年の一般財源化案で荒れに荒れた自動車税、重量税、自動車取得税、ガソリン税といった、道路財源として使用する名目の税金の流用批判の流れの中、少しでもその矛先を逸らそうとしたかのようなおざなりな対応だな、という気がしないでもありません。
 
 事実上、これら車にまつわる税制は長らく暫定税率というもので継続され続けて、約30年間もの間「とりあえず暫定的に」と言ってきたわけです。つまり、本来はもっと安かったのでありまして、今までずっとわれわれ自動車ユーザーは超課税をされてきたのであります。 

 まして、その揮発油税、つまりガソリン税に対し消費税というものが有耶無耶に乗せられ二重課税となっている問題に関しても納得のゆく回答がないままずるずるときておりまして、「重量税が減税になりました」ではなく「元に戻す努力をしています」と素直に認めればよいものを、問題は芋づる式に山積して行くばかりの昨今。

 ちなみに重量税低減のメリットを享受できるのはエコカーおよび初年度登録から18年以内の車両に限定されておりまして、ドイツ本国で作られたワーゲンは対象外です。

 セコい施策です。

 そんなところで今日は重量の話。
ワーゲンって速いの?と、馬力の話に乗じてパワーウェイトレシオというものの話をすることがあります。

パワーウェイとレシオ、つまり馬力と重量の相関関係といいましょうか、馬力のある車でも重量が重ければ遅い、その逆に馬力のない車でも重量が軽ければ速い、と単純な図式でありまして、理論や工作精度、その他素材などの問題のためパワーが出せなかった旧来の乗り物というものは出来るだけ軽くすることが各種の機動性能、運動性能を上げるための一つの大きな課題であったわけです。

旧日本軍の誇る零戦をはじめとする戦闘機群などはいい例で、実際軽くていいエンジンを積んでいたのも事実ですが、何より機体を簡素に軽く作っていたことが他国の群を抜く運動性能と航続距離で文字通り無敵を誇る戦闘機として記憶されていました。

反面、現在でも「アメ車はでかい重い」と揶揄されるように、当時のアメリカ軍の戦闘機は鈍重といえるもので、その分大きなエンジンを積まなければなりませんでした。
まあ、なぜ重くなった、ならざるを得なかったというのは設計の問題もあったでしょうが、そこはそれヒューマニズムを国是とする国ですから(笑)興味がある人はご自分で調べてください。話が長くなりますので。

現在車というものがいったいいくらくらいの重さなのかと申しますと、俗に一昔前は車一台が1トンと覚えていたように思いますが、現在の平均乗用車で1トンから2トンほどの重さに落ち着いています。ですから「普通の車」に乗られている方は近年の通常車検時には37800円とか50400円とかいう重量税を支払っていたはずです。

ですが、私が昔車一台が1トンと覚えたように、実際に30年ほど前といえば1トンほどの普通車というのは特別軽いわけではありませんでしたし、平均であったはずです。
今では軽自動車ですら1トン近くか1トン超まで重量を増してきているものもありますから「軽自動車」が何をかいわんやです。

 ではなぜ時代が下るごとに性能のデメリットとなる重量が増すのかといえば、従来にはなかった装備が増えたからに過ぎません。庶民が自家用車を手に入れだした60年代や70年代ではほとんどの車にクーラー(今ではエアコンといいますが)が標準では装備されていませんでしたし、もちろんブレーキアシスト(一部はありました)もパワーウィンドウもパワーステアリングも、当然電動シートもなければオーディオですら1スピーカーAMラジオか2スピーカーFM付あたりで、内装も板を一枚めくれば鉄板という簡素さで、今の軽自動車にも劣る装備でした。

そんなわけで何もがんばって軽くしなくても、重くはならなかったわけでしてエンジンも強力なものがなくともそれなりに走ったわけです。

つまるところ現代はその逆を行くわけでして、装備が増えた分強力なエンジンが必要になった、あるいは強力なエンジンを開発できる技術とともに付加装備を加えられる余地が出来たと、鳥か卵かという話になりますが、実際は庶民のニーズが上がりメーカーが商業的判断により迎合していったことが大きな要因でしょう(笑)

走行性能というものはまっすぐ安定的に快適に走る機動性能と、走る止まる曲がるという運動性能の二つに分けられると私は考えますが、このどちらが欠けても乗りにくい車になることはご理解いただけるかと思います。
ですからエンジンの性能やボディだけではなく足回りというものにも従来にはなかった新装備、新機構などなどが一様にほどこされていったのもまた車の歴史であり、強力な大排気量のエンジンとそれを抱えるシャーシを支えるための足がそれなりのものを要求されることで重量増しの要因になっていったことも事実です。

で、ワーゲンの重量はいくらなのかとやっとこさお話が出てくるわけですが、50年代前半から70年代後半まで製作が続けられたタイプ1ビートルで800キロあたり、同じく67年まで製作されたアーリータイプ2で1トンと数十キロ、レイトタイプになるともう少し重いですがそれでも1.2トンほどです。

同クラスの現代の車よりも明らかに軽いということはお解かりいただけるかと思います。当然装備も最小限のものしかついていないからですが、それだけに十二分に現代の交通事情下で不都合のない走行性能を発揮してくれます。
時代や地域によって多少の馬力換算は違ったとしても、70年代のビートルの馬力が50馬力程度で800キロの重量、そこそこの国産セダンといえば近年のカローラで110馬力、重量が1100キロとしたとき、パワーウェイトレシオはビートルが1馬力あたり16キロ/PS、カローラが10キロ/PSといった計算になります。1馬力で何キロを動かしているかという計算ですね。

もちろん、理論上ではカローラにぼろ負けです。うん、ぼろ負けですね。時代差を鑑みればまあ善戦といっていいでしょうけど。
この数値をどう見るかですが、残念ながらカローラの10キロ/PSというのはいささか甘めに見た数値です。実際はエンジン性能が非常に高いせいもありレシオはほとんどの国産普通車が10K/PS以下といってもいいでしょう。
ビートルの叩き出す数値はせいぜい軽自動車と拮抗できるか位のレベルであり、それとて軽自動車には64馬力規制があるため、性能の上限が知れているからであります。

つまり、ワーゲンというのは数値上だけで見るともはや走行性能で勝てる車などはないといっても過言ではないほど性能は低いのですが、ただ、車は計算式の上を走っているわけではありませんで、実際には体感する加速感やトルク感で人間はパワーを感じています。あとは車体そのものの取り回しも非常に大きな要素であり、パワーウェイトレシオが優れているということと、乗りやすい、速いというのはイコールでは単純にはつながりません。

ワーゲンのエンジンは低回転、高トルク型のエンジンでノーマルエンジンなら良く回って5千、6千回転、最高速度150キロといったところでしょうか。

これは耐久性を優先した結果の味付けであり、ちょこっと弄れば100馬力くらい出るエンジンであることはドラッグレースなどを見ても明らかだと思います。(つまり、馬力を出そうと思えば出せたが敢えてやらなかった、といってもいいでしょう)

しかしながら、そういった性質のエンジンであるという知識だけでは速さが測れないのが車の面白いところです。
そして人もまた心のあり方によっては見るものが180度も270度も違って見えることを考えれば、速いかどうかなんて実は相対的な価値でしかなく、自分が気持ちよければいい、といったところに収斂されるのだろうな、と。

昔はあんなに嫌いだったのに今は恋人でラブラブ、なんて甘酸っぺぇ青春もあったりするもんです。

ちなみに知っておくと何かと重宝するのでついでに書いておきますが、日本の道路は80キロ以上出せません、ということになっています(笑)

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