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高齢者と運転

2019. . 18
てんちょのあやしいはなし

高齢者による交通事故が増えている、とまことしやかに囁かれる昨今ですが、例によって例の如く、マスコミによる印象操作が功を奏している証左であると先に断っておきます。

事実、警視庁交通課のデータをみたとき、平成19年から29年の事故数の推移は右肩下がりで、特に顕著なのが十代(免許取得の16から19歳まで)で、平成19年に十万人あたり、3000件弱ほどあったものが29年では激減して、1600件程まで落ち込んでいます。もちろん営業利益ならともかく、事故が減少するのは何も悪いことではございませんので、どんどん落ち込んでもらってもいいのですが。

では、高齢者はどうかといいますと、こちらも同じく右肩下がりで、70から85歳くらいをみたとき、こちらも平成19年時で1000件あたりをうろついているものが、29年では平均600件くらいにまで落ち込んでいる。全年齢に対して言えるのは、ほぼ同じ割合で事故数は減少しており、19年を100とすれば29年は実に60パーセントを切るくらいまで事故率は下がっています。

事故の数が最も多いのはいうまでもなく10代で、次いで二20代、85以上、70代、30代と続き、40代がもっとも事故率は低いのですが、10代20代を省けばどっこいどっこいといったところです。

なので高齢ドライバーの事故率がとりわけ高い訳でもなく、増えている訳でもないのです。
では何故、マスコミは高齢者による事故を喜んで取り上げるのかといいますと、理由は単純なことで、派手で耳目を集めるから、その一言に尽きます。
逆から引いてみれば解ることです。

二十代男性が交差点で出会い頭の車同士の接触事故。原因は不注意によるもの、互いに軽傷であった。

こんなもんがニュースのネタになりますか、って話です。
そして、番組的に事故に付随して話を盛りやすいということが言えるでしょう。
高齢者の事故の話題から、高齢者の免許返納とか、移動手段の喪失が~とか、コミュニティの崩壊は地域行政の課題とか、やはり自動運転によるサポートは不可欠だとか、そもそも、自家用車の維持費を考えれば、老人は公共交通機関やタクシーを積極的に利用すればいいのではないかとか、とか。

まあ、私的には運転技術の未熟な十代も随分危ないと思う訳でして、とりわけ老人が危険という意識はございません。
第一、我々の業界、主にクラッシックカーやヴィンテージカーを愛好する方々は老齢高齢の方の割合はかなり多く、逆にそういった方がすごい事故を起こした話なんてのは聞いたことがありません。

そりゃあ、人間いつかは老いて朽ちるわけで、ボケもしますから、自らが良しと思っていても危ない事は往々にしてあります。
またそういう人に限って、免許を返納するのを嫌がったり、猛反発したりして、より厄介だったりします。
もちろん、車の運転が出来なくなるというのがどれほど男のプライドを傷つけるかというのも、私はよく判ります。

家庭内で唯一親父が奥さんに勝てる部分だから、そこを失ったらもう立場がない、というモロに哀れな人もいるかもしれませんが、実際問題、端的にいえばはそういうことであり、使えていたものが使えなくなる、出来ていたことが出来なくなる、というのはせっかく獲得した能力を失ったということであり、しかもそれはもう戻ることがないという悲しみであり、絶望なのですね。

それは四肢の機能を失うのにも似ているかもしれません。
たかが自動車の運転というなかれです。我々のような車やバイクといった乗り物に携わってきた人間にとっては、さらに別の意味も含んできます。

最初から車に乗ってこなかった人には、車のことも車の良さも、車の楽しさも、車を失う悲しさも、まあ一切合切感じることはないでしょう。あんなモノは合理的ではない。金銭をはたいて、リスクを負うだけの非合理の極みである。そう言いきってしまうこともできます。

だが、「危ない、危険だ、迷惑だ」と、リスクを避けるがために「やめる、しない、なくす」の選択に向くのは、退行的で私はあんまり好きじゃありません。

今朝、ウチの自宅のお向かいのご夫婦が引っ越されてゆきました。
二人とも高齢で、今後何かがあると事なので、息子夫婦の近所に越すのだそうです。

今まで随分と親切にしてくださいましたし、何かと気にも掛けてくださっていたので、さすがに寂しく感じています。
これまでは車に乗らなければいけない生活圏だったものが、引っ越すことで乗らなくてもいい生活圏に変わってしまう。
やらなければいけなかったことが、やらなくてもよくなってしまう。

「また遊びに来るからね!」そういって別れ際に私の手を取ってくれたご主人の言葉が胸に刺さります。
ひょっとしたら、これが今生の別れになるのかもしれないな、と。

ふと、我々くらいの歳の人間は、人との別れについてあれこれと考えてしまうのですよ。


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